御社の部門損益はちゃんと「活きて」いますか?

(3)ベクトルはこうして合わせる!

「従業員が思ったように動いてくれないんだよなぁ。少し考えれば分かるハズなんだけど…」

 

経営陣の方から良く耳にする言葉です。社長自身の在り方や従業員との関係性、そもそも上記の様な「従業員を動かす」という姿勢自体がどうなんだ!?という視点は一旦置いておいて、ここでは「経営陣と現場従業員の方とのベクトルを合わせる」という見方で。

 

さて、もし上記の様な悩みがおありなら、まず確認してほしいことは、「取ってほしい行動/やってはいけない行動が、社員に分かる形になっているかどうか」ということ。典型的には、望ましい行動が文書化されていて、実行した社員を褒める、公表する、表彰する、インセンティブを与える、など(逆も同じです)。

 

・・・ココまでだと、まぁ「良く聞く話」ですよね。ここで加えてお伝えしたいのは、それらの「取ってほしい/やってはいけない行動」を、戦略的に会計に落とし込む、という事(一般論ではなく当社推奨スキームです)そしてその会計をしつこく運用していく事、です。

 

例えば、、、

  • 通常は出荷や検収時点でしか計上できない売上を、契約時点で50%計上する

  • 社外向けではなく部門間の「出荷」も売上として計上する

  • リユース業界なら、買い取り(=仕入)に対して収益計上する

  • もっと大胆に、例えば「優秀な人材を紹介して入社に繋がったら100万円の収入、逆に失望退職を招いたら100万円の損失」としてしまう

  • 人材を育成して他部署に送り出したら、異動先から異動元に50万円を「支払う」

  • お客様からの感謝の手紙は10万円の収益にする

  • クレームは110万円のペナルティだが、それを次の購買に繋げれば50万円プラスする

 

などなど。会社や部署の性質に応じて、かなり自由に設計できます。通常の会計の売上に直接関係しない部門(製造や管理部門)さえ、部門別会計によって利益を計上できる様な作りこみをする事も可能です。

※ 勿論、社内用の会計なので、粉飾などには当たりません。下記3.の項をご参照下さい。

 

ここで重要な事は3点。

 

1.「その部門の役割を果たしたら利益が上がる」形に作りこむこと

もっとも基本的な事は、その部門の存在意義ともいえる「社内における役割」を果たした時に利益が計上される様にする、という事です。 

例えば、中古品売買の会社での買取部門で、とにかく商品を集める事が役割だと定義すれば、「仕入点数に応じて『売上』を計上する」事になりますし、仕入価格もその部門の裁量になっていて安く仕入れる事が役割ならば、「想定売価と仕入値の差額を『売上』として計上する」という事になります。

又、その部門が「一つの会社」として独立したら何が売上になるのか、と考える事も参考になります。

 

2.本業以外の事はスパイス的に。ダイジなのは「方向性が明示されている」ということ

例えば人材採用や育成に金額を付すのは、あくまで「+α」の範囲で本業をあまりに侵食しない程度に。勿論、採用の重要性が増せば、評価の金額を上げる事は効果的ですが、そのインパクトが大きくなって本業への注力がそがれるのは本末転倒。それよりもここでダイジなのは「何をやると評価されるのか」が明示されていることです。「何をやったからプラス(マイナス)」という事が分かる事で、ベクトルが揃いやすくなります。

 

3.財務会計との差異を認識しておくこと

ここで述べている事はあくまで「社内用の会計」(いわゆる管理会計)についてです。税務署や銀行へ提出する、通常税理士の方が行う「財務会計」とは別物です。(勿論粉飾などには当たらないのでご心配なく。)ここは、管理部門が脳みそに汗をかいて作りこむところです。

 

で、例えば通常の会計処理では発生し得ない「人材採用,育成」などについて金額を付けるとすると、財務会計との乖離が出てきます。最も避けねばならないのは、「部門会計上の合計では利益が出ているが、財務会計上では赤字」という状態を招くこと、かつそれに「気づいていない」こと。こういう場合は作りこみが甘いか、その後の管理が甘いかのいずれか、です。

 

前回までの繰り返しになりますが、部門別会計は上手く運用できれば業績を【劇的に】改善できるパワーを持っています。それには、経営の意図が色濃く反映される様に作りこみ、かつ粘ちっこく運用していく事が不可欠です。

 

部門損益を元にランキングや表彰、インセンティブへ反映する事も(上手く運用できれば)従業員の方の行動が変わりますし、経営陣と部門責任者が部門損益について常に話し合う機会を持つ、雑談の中で折に触れ言及する、等だけでも、それまでとは違う言葉が現場の方の口から飛び出てくる様になりますよ ^ ^

 

部門別会計シリーズはこれで一旦終了!です。ご質問等はコメント欄かFacebookで!


 

【セミナー開催のお知らせ】

セミナー詳細はこちら

主に経営層の方を対象に、財務の初心者向け決算書の読み方セミナーを開催します!
自社の決算書をお持ち頂き(なくても結構です。見本を準備します。)、
セミナーと同時進行で分析して頂きます。

内容は簡単ですが、基本的なところはしっかりとおさえますので、税理士や銀行員と本質的な話ができるようになります。
8
18日(火)13:3016:30、名古屋駅から徒歩5分のウインクあいちにて。

既に経営層の方、将来の経営層の方、経理担当で「簿記は分かるが決算書は…」という方にお勧めです!


お問い合わせ