
皆さんは、「借金のない会社が良い会社だ!」と思いますか?それとも借金がある方が良い?
「借金なんてない方が良いに決まってる!保証人にもなってるし、夜安心して眠れないよ。」
「無借金は優良企業の代名詞じゃないか!」…。うん、そういうお気持ちも分かります。
しかし、声を大にして言いたいのです。「社長!自信を持って堂々と借金して下さい!」と。
なぜならば…。
ここでは、会社を「キャッシュを生み出すマシーン」と考えてみます。
「何言ってんだ、会社は生き物だよ!!!」という主張はとりあえずそっと懐にしまっておいて。
ここではあくまでファイナンス的な観点で。
お金を調達すると、金利などの「資金調達コスト」がかかります。
たとえば、あなたが多店舗展開のレストランを営んでいて、空白地帯に1億円掛けて出店する事で、
長い期間において1,000万円/年のリターンを生み出せるとしたら?
そして手元資金がない代わりに、年3%で借りられるとしたら?
ここは、迷わず借金です。
判断基準は「資金調達コストより高いリターンを得られるかどうか」。
ここでは、3%で調達したお金をマシーンに入れたら10%の現金が生み出せる、という事になります。
そしてココこそが、経営者のウデの見せ所なのです。
なぜか。
「いくらのコストを掛けて、どれほどのリターンを得るか」という事は、
社長が普段やっている「原材料を仕入れて、加工し、付加価値を付けてお客様に提供する」という事と同じ。
世の中にいかに高い価値を創造できるかの表れであり、それこそが経営の根幹だからです。
従って、資金調達コストよりも高いリターンを得られるのなら、社長、ぜひ堂々と借金なさって下さい。
その為には、「そういう事業機会を見出す力」と「それを実際に実行し、実現させる力」がカギになります。
社長がいかにそのビジネスに精通していて、どれだけの実行力があるか。そこにどれだけの自信があるのか。
「資金調達コストは5%だけど、ウチはコンスタントに15%のリターンを出せているよ。
だからどんどんおカネを調達して、どんどん企業価値を増大させるんだよ。」
という視点で、ぜひ自信をもって堂々と借金して頂ければと思います。
そしてその状態が継続する限り、その借金は返すのではなく、借り続けた方がベターです。(むしろもっと借りた方が良い。)
少し無機質な言い方ですが、ファイナンス的には、
「会社」というキャッシュ製造マシーンをいかにうまく稼働させてより多くのキャッシュを生み出すのか、
その運転技術が経営者の手腕と言う事ができます。
一方で、資金調達コストより低いリターンしか見込めない事業には投資すべきではありません
(少なくともファイナンス的には)。
既にそういう状態であるならば、そしてそこから抜け出せないのなら、
最善の手は「縮小」「撤退」「売却」という事になってしまいます。
無借金の会社は、確かに安全性という観点では優良と言えます。
しかし、事業機会を見出しリターンを得る、という観点から見ると、解釈は異なったものになります。
(とは言え、「事業機会を見出す」という事がそもそもハードルの高い事ではありますが・・・)
自信を持って資金調達されている例として、ソフトバンクの孫さんは典型的ですよね。
少し前ですが、ボーダフォン買収時、兆単位の資金調達をしながらも自信を持って買収し、
コスト以上のリターンを悠遊と上げておられます。
・・・とまぁ、イイタイコトを好き勝手言ってしまいました。
上記は理屈ですが、実務では理論通りに行かない事はよくある、というかむしろその方が多い。
でも、理論を知ってと知らずでは、やはりその判断の質が全く異なると思うのです。
尚、文中ではかなり単純化していますが、実際にはより精緻に考える必要があります。
例えば「10%や15%のリターンって言っても、未来永劫じゃないでしょ?」
「リターンって、利益とはどう違うの?」など。
ここにはNPV法(Net Present Value:正味現在価値)というファイナンスの理論があります。
具体的には、法人税や事業リスクなども織り込んだ上でその事業が将来生み出すキャッシュを現在の価値に換算する、
という方法です。詳しくは又、別の機会に…
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